SDGs認知度調査からみる日本の現状

このほど電通からSDGs認知度調査が発表されましたが、SDGsという言葉の認知度は非常に高くなってきた傾向が見て取れます。しかし、今の日本は30年前のヨーロッパといっても過言ではない現状。言葉の認知度だけでは、本来の達成には結び付きません。

電通のSDGs認知度調査では、過去5年間の調査で最大で86%の認知度となり、Z世代とそれ以上の世代の比較などされていましたが、もはやこれらは言わずもがなの状況。86%という数字は一見高いように見えて、実は真意を知らない場合がほとんどです。たとえば、取り組みたい項目1位として、「すべての人に健康と福祉を」があがっていること。ターゲットまで十分に読まれず、マークの日本語訳(和訳が間違っているというわけではない)に惑わされているということが伺えます。また、圧倒的に、SDGs=「環境配慮だけ」 だと勘違いされていることなどです。これには、先に日本でSDGsのワードのほうが出てきて、独り歩きしてしまった結果だと考えます。
なぜZ世代のほうが意識が高いのかも、この調査では浮かび上がってきません。さらに、一部のメディアで表面的なSDGsの解説がなされ、あいまいさを増長させます。

一方で、欧米では、すでに30年ほど前から消費者に環境配慮の視点が根付き、地球環境に還元するならとその付加価値に対してお金を費やすことが一般的です。環境問題も、いわゆる人と地球だけでなく、ある時点から「サステナビリティ」へ転換していきます。このサステナビリティの考え方も、単に環境だけではなくなり、その過程で、SDGsの前身であるMDGsが採択され(2000年)、さらに2030年までの目標としてSDGsが2015年に採択されました。その根底にあるのは、「サステナビリティ(持続可能性)」です。実はあまり知られていないですが、SDGsの各目標は、それぞれにリンクしていて、たとえば「ゼロハンガー」を無くすには、「すべての人に健康と福祉を」も非常に重要であるように、一つの目標だけでは、グローバル目標が達成できないとすでにいわれているからです。(「ウェディングケーキモデル」というのは、それらをわかりやすく説明したものだと私は解釈しています。)
さらに言えば、SDGsは2030年を迎えると、無くなるか別のものの形を変えるかといった”一過性”があるものです。欧米ではすでにサステナビリティからのMDGs~SDGsですから、いまさらSDGsかといったような風潮もあり、市場トレンドをみても、SDGsの言葉はほとんど出てきません。ESGはかなり出てきますが、市場トレンドで上がってくる言葉はSDGsよりも「サステナビリティ」です。

ではなぜ、日本でSDGsが他人事なのか。まず、SDGs自体についての理解も薄いですが、その前に日本は島国の単一民族・単一言語の国家です。いくらインターネットが普及して、自由に海外を行き来できるようになっても、”自分の国で起こっていることではないこと”としてとらえるからだと私は分析しています。その反面、欧米は隣国と陸続きでいろいろな人種・文化を目にしやすい。”ある種の多様性”を受け入れやすい状況にあります。また、日本が先進国であることもこれに拍車をかけていると考えています。SDGsはグローバル目標ですから、先進国だけでなく、途上国が達成しなければならない目標も半分程度あります。これまで日本が行ってきた途上国へのインフラ支援なども、どちらかというとSDGsの観点ではなく、断片的なCSRに近いものがあります。
サステナブル先進国である欧米では、早くから教育にサステナビリティ/SDGsの概念を取り入れ、学問が進んでいます。日本ではビジネスの中心を担うミドル世代にとっては、ある種の時事問題としか認識されず、2020年度から文科省の学習指導要領が変わり、環境・サステナビリティ・SDGsについて一部勉強する機会を持ついわゆるZ世代以下には、より身近に問題を感じやすくなっているのです。それでもまだまだ欧米に比べたらずいぶんな遅れをとっていて、このZ世代も正直日本総人口で考えると約1/3程度・・。少子高齢化の日本では、いくらZ世代がけん引しても、欧米ほどの進捗はすぐにはないでしょう。アメリカは、約半分がZ世代なので、子から親に伝え・・などというように情報収集~伝達というのも積極的に行っています。人口構造は、サステナビリティ達成のためにはよく考慮しなければならないポイントだと思います。ただ、昨年のCOP26あたりから今年にかけて、日本サステナビリティが国家戦略にもなりつつあり、期待もあります。

消費者の意識レベルは、企業の意識レベルに比例すると私は考えていて、Z世代のみならず全人口に対して、サステナ教育を行わなければ、真のサステナビリティ達成にはつながらないのですが、まず意識の高いZ世代からのアプローチはグローバル動向から見ても有効です。ただこれも、”若い人のもの”と大人も他人事にしてはいけません。企業は特に、視野を広く持ち、ウォッシュのないアプローチが重要になりますので、このため日本全体の意識を上げることも重要だと思います。

>まとめ
・SDGsを表面的に解釈せず、それぞれのターゲットまできちんと読む
・SDGsは一過性!もっと「サステナビリティ」の概念を(SDGs・サステナビリティ≒環境)
・表面的な報道に惑わされないようにする
・ウォッシュを見極める(一般)/ウォッシュを回避する(企業)