米国の食品・ニュートリション業界では、食品のアップサイクル原料が大ブームになっています。米国農務省によれば年間生産される食品の30〜40%が廃棄物となっているので(世界経済の損失額は年間9400億ドルを超えるともいわれる)、先進国でよくいわれるフードロス削減につながるだけでなく、700億トンあまりの温室効果ガス削減に役立つとされています。
現在多数の食品・飲料ブランドで、アップサイクル原料が採用されています。
消費者は食品を買うときにこのような部分にも目を向けるようになり、環境に対するフードシステムの影響を心配しており、サステナブルな食品を好むようになりました。。ある調査では、消費者の76%が環境に配慮した食品を試すことを好意的に思うことが分かっています。しかし、そのような意識を持っていてもサステナブルな食品の存在に気が付いていない消費者のために、米国では、アップサイクル食品協会(UFA)が2021年4月に同年下半期にサステナブルな成分が含まれていることを示す認証システムを開始することを発表しました。UFAは、アップサイクルされた食品会社などによって2019年に設立された組織で、すべての食品をもっとも有効的に使用するフードシステムを構築することを目指していています。また、foodnetworkやwholefoodsのような大手食品企業は、アップサイクル食品をトレンドの一つとしているため、今後は消費者の意識もさらに向上する可能性があります。ある専門調査では、アップサイクルされた原料市場は2019年に467億ドルの価値があり、今後10年間で5%(CAGR)で成長すると予想されています。
実際にアップサイクル食品を取り扱う事例として、日本企業とUFAが最初に提携したカカオフルーツ飲料ブランドや、(Root-to-Stemの考え方から)果物の皮を含むドライフルーツスナックブランド、ほとんど廃棄されるチーズの副産物ホエイを使用したクラフトスピリッツ、ビール製造時に使用済み穀物を採用したもの、チョコレート生産時に出るカカオ果実をアップサイクルしたWholeFruit Chocolateなどがあります。
ホエイは、すでに日本国内でもドリンクや化粧品成分(=保湿力が高い)として利用され始めています。また、チョコレート生産においては、収穫されたカカオの約30%しか使われていないのが現状で、近年は残りの70%を使おうという動きがあります。毎年1,000万トンのカカオ果実が無駄になっており、成分をアップサイクルすることで、年間35億本の木を植えるのと同じ規模で二酸化炭素を削減できるといわれています。ここに登場するWholeFruit Chocolateは、100%カカオフルーツから作られ、伝統的かつベルベティ(ミルクの追加を含む)の品種で、一般的なダークチョコレートやミルクチョコレートよりも砂糖が40%少なく、繊維が約90%、タンパク質が25%多くなっているといいます。そのため、地球だけでなく健康志向の消費者にとってもより良いものと評価され、人気が高いです。
国内でめずらしいものとしては、惹いた後のコーヒーを活用した雑貨やアパレル製品へのアップサイクル、食品加工などで出る廃棄野菜を使った化粧品成分としての活用模索などにまで広がっています。
単にフードロス削減、フード業界単体という視点のみならず、化粧品やアパレルなど他分野へのアップサイクルまでの多様性を見せている部分に、今後も引き続き注目しています。